金曜blog「気学のキホン」では、初心者の方にも分かりやすく、気学の智慧を日々の暮らしや仕事の中で自然に取り入れていただけるよう、毎回テーマを変えてやさしく解説しています。
「土用」と聞くと、土用の丑の日に食べるうなぎや、土用しじみを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
暑い夏を元気に乗り切るための食の風習として、すっかり定着しています。
けれども、土用は「夏のある一日」や「うなぎを食べる日」だけを指すものではありません。
実は土用とは、次の季節へ移る前に訪れる、約18日間の「季節の調整期間」です。夏だけでなく、春・夏・秋・冬の年4回あります。
今回は、土用の本来の意味と、この時期を暮らしや仕事の中でどのように過ごすとよいのかを、気学の視点から分かりやすくご紹介します。
土用とは、季節と季節をつなぐ調整期間
土用は、立春・立夏・立秋・立冬の直前に設けられた約18日間を指します。
春から夏へ、夏から秋へというように季節が大きく切り替わる前には、気温や湿度が変化し、草木や生き物の様子も少しずつ変わります。
私たちの身体や気持ちも、知らず知らずのうちに、その変化の影響を受けています。
気学の基礎となる五行では、自然界の働きを「木・火・土・金・水」の五つに分けて考えます。
春は木、夏は火、秋は金、冬は水に対応し、それぞれの季節をつなぎ、次の季節へ受け渡す役目を担うのが「土」です。
そのため土用は、単に運気が悪い時期なのではありません。
これまでの流れをいったん落ち着かせ、身体や環境を整えながら、次の季節へ向かうための調整期間と捉えることができます。
2026年の夏土用と「土用の丑の日」
2026年の夏土用は、7月20日から8月6日までです。夏土用が明けると、暦の上では8月7日の立秋を迎えます。
そして、2026年の夏の土用の丑の日は、7月26日です。
「丑の日」とは、一日一日に割り当てられている十二支のうち、丑に当たる日のことです。土用の期間中に巡ってくる丑の日を「土用の丑の日」と呼びます。
本来、土用の丑の日は、必ずうなぎを食べなければならない日ではありません。
昔から丑の日には、うどん、梅干し、瓜などの「う」のつく食べ物や、しじみ、土用卵、土用餅などを食べる風習も伝えられてきました。
土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は、商売人の智慧から
現在では「土用の丑の日といえばうなぎ」という印象がありますが、もともと日本中で、この日に一斉にうなぎを食べていたわけではありません。
夏にうなぎを食べて身体をいたわる考え自体は古く、『万葉集』にも夏痩せした人にうなぎを勧める歌が残されています。しかし、「土用の丑の日にうなぎを食べる」という習慣が広く定着したのは、江戸時代以降とされています。
そのきっかけについては諸説ありますが、よく知られているのが平賀源内にまつわる話です。
当時、うなぎの旬は脂がのる秋から冬と考えられ、夏は売り上げが落ちやすい時期でした。そこで、夏場の商売に悩んだうなぎ屋が平賀源内に相談したところ、店先に「本日、土用の丑の日」と書いた看板を掲げることを勧められたといわれています。
丑の日には「う」のつくものを食べるとよいという言い伝えに、うなぎを結びつけたのです。
さらに、暑さで食欲が落ち、疲れがたまりやすい時期に、「うなぎを食べて力をつけよう」という印象を持たせることで、夏のうなぎを魅力的な商品として打ち出しました。
後世には、「丑」という字の形を串に刺したうなぎの姿になぞらえたという話も伝えられています。由来にはさまざまな説があり、史実として一つに確定しているわけではありませんが、言葉、季節、人々の健康への関心を上手に組み合わせた商売人の発想が、習慣を広める力になったことがうかがえます。
江戸時代に生まれた季節の販促企画が、長い年月を経て日本の夏の風物詩になったと考えると、現代のビジネスにも通じる興味深い話です。
単に商品を売るのではなく、「この季節に必要とされる理由」を分かりやすく伝える。そこには、今でいうマーケティングやブランディングの原点を見ることができます。
土用に大切にしたいのは「無理に進めすぎないこと」
季節が切り替わる土用の時期は、気温差や湿度の変化によって、いつもより疲れを感じることがあります。
普段なら気にならないことに腹が立ったり、判断に迷ったり、何となく集中できなかったりすることもあるでしょう。
そのようなときに、「もっと頑張らなければ」と自分を追い立てる必要はありません。
土用は、積極的に物事を押し進めるよりも、いったん立ち止まり、身体と環境を整えるのに向いている時期です。
例えば、次のような過ごし方を意識してみましょう。
- 夜は照明を少し落とし、早めに休む
- 睡眠時間を丁寧に確保する
- 冷たいものの取りすぎに気をつける
- 入浴などで身体を緩める
- 予定を詰め込みすぎず余白を残す
- 食品の保存や調理時の衛生管理を見直す
- 身の回りを片づけ、次の季節に備える
気学は、土用だから特定の病気になると判断するものではありません。体調の変化が続く場合や症状が強い場合には、必要に応じて医療機関へ相談することも大切です。
なぜ土用には「土を動かさない」といわれるのか
昔から、土用の期間には土を動かすことを控える習慣があります。
土用は「土の気」が強く働く時期であり、土を休ませるために、農作業や大がかりな土木工事を避けてきたと考えられています。
かつて農作業が生活の中心だった時代には、田畑だけでなく、働く人の身体を休ませる必要もありました。
現在の生活に置き換えると、できれば次のような作業は時期を選びたいところです。
- 庭や畑を大きく掘り返す
- 樹木の伐採や大がかりな植え替えをする
- 建物の基礎や土台に関わる工事を始める
- 増改築や解体工事に着手する
- 給排水管などの大規模な配置変更を始める
ただし、草むしりも水やりも一切してはいけないという意味ではありません。
植物を枯らさないための手入れや、漏水・破損など生活の安全に関わる修理は、必要性と安全を優先します。
すでに始まっている工事を、すべて中止する必要もありません。可能であれば、大がかりな工事の着工日や、土を大きく動かす工程を調整するという取り入れ方で十分です。
ビジネスでは「決断しない」より「整えてから決める」
経営者やビジネスパーソンにとって、土用は何もしてはいけない期間ではありません。
むしろ、進み続けてきた仕事を点検し、方向のずれや無理が生じていないかを確認するのに適しています。
- 計画と現状の差を確認する
- 優先順位を整理する
- 採算の合わない業務を見直す
- 曖昧な役割分担を整える
- 契約や書類の内容を再確認する
- パソコンや設備のメンテナンスを行う
- 次の季節に取り組むことを絞り込む
新しい企画を思いついた場合も、すぐに結論を出さず、まずは情報を集め、条件を整理してみましょう。
江戸時代のうなぎ屋が、売れない時期をただ嘆くのではなく、季節の意味と商品の価値を結びつけたように、立ち止まって見方を変えることで、新しい可能性が見つかることがあります。
土用は「動かない時期」というより、次にどのように動くかを整える時期なのです。
よくある質問
Q1.土用の期間中は、新しいことを始めてはいけませんか
絶対に始めてはいけないということではありません。
仕事上の期限があることや、生活の都合で時期を変えられないこともあります。必要なことは、通常どおり進めて構いません。
ただし、勢いだけで契約する、大きな投資を即決する、準備不足のまま事業を始めるといった行動は控え、いつもより確認の工程を増やすとよいでしょう。
始めるか、やめるかの二択ではなく、「条件を整えたうえで進める」という考え方が大切です。
Q2.土用中に草むしりや工事が必要になった場合はどうすればよいですか
日常的な手入れや、安全・衛生に関わる作業まで我慢する必要はありません。
植物への水やり、通行の妨げになる草の除去、台風対策、漏水や設備故障の修理などは、安全を優先して対応します。
大がかりな掘削や植え替え、基礎工事など、日程を選べる作業であれば土用の前後へ調整する方法があります。
昔から、土を動かしてもよいとされる「間日」もありますが、日付は季節や年によって異なるため、実際に利用する場合は暦を確認しましょう。
土用を「休みながら整える時間」に
土用は、夏のうなぎやしじみを味わうだけの時期ではなく、四季それぞれの変わり目に訪れる調整期間です。
身体、住まい、仕事、人間関係を見直し、余分なものを整理すると、次の季節に向けて自然に動きやすくなります。
土用の丑の日にうなぎを食べる習慣も、季節を乗り切る智慧と、商売人の柔軟な発想が結びついて生まれたものと考えられます。
土用を怖がる必要はありません。
「今は少しペースを整える時期なのだ」と知り、休むこと、見直すこと、次の準備をすることに意識を向けてみてください。
経営者・事業責任者の方へ
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